世界的課題の展望 (Global Agenda Outlook 2015 by World Business Forum)

 World Business Forumが毎年発表してるGlobal Agenda Outlookの2015年版が11月7日に発表されました。日本では、衆議院の解散が決まり、14日の投票日に向けて各党の動きが活発になっていますが、私としては、日本社会の動向あるいは課題が世界の動向および課題とどの様に関連しているのかを見ておきたいと思っており、今回のWorld Business Forumの発表を共有したいと思います。以下、WBFで発表されている日本語版のまとめです。

 

 2014年11月7日 スイス、ジュネーブ-本日発行されたグローバル・アジェンダ・アウトルックは、一層深刻化しつつある所得格差および失業の増加が2015年のトレンドのトップ10位中の首位に位置するとしています。今年の調査では、これらの積年の経済問題がさらに政治および環境面に拡大する懸念を含んでいます。

 これらのトレンドは、世界経済フォーラムのグローバル・アジェンダ・カウンシル・ネットワークおよびフォーラム内の他のコミュニティに属する約1,800名もの専門家を対象として、今後12~18ケ月間にリーダーが専心せざるを得ないと信じる事項について実施した調査に基づくものです。

2015年のトレンドのトップ10位は、以下になります:

1.所得格差の深刻化  Deepening income inequality

2.失業の増大の継続  Persistent jobless growth

3.リーダーシップの欠如 Lack of leadership

4.戦略地政学的な競争の激化 Rising geostrategic competition

5.議会制民主主義の弱体化 Weakening of representative democracy

6.開発途上国における汚染の拡大 Rising pollution in the developing world

7.過酷な異常気象の発生数の増加 Increasing occurrence of severe weather events

8.ナショナリズムの先鋭化 Intensifying nationalism

9.水問題の拡大 Increasing water stress

10.経済分野における健康重要性の増大 Growing importance of health in the economy

 

 このリストのトップに格差および失業が目立っているのは、賃金の低迷が、成長および雇用機会を妨げる一因となり、格差が根強く残るという悪循環を生み出しており、これらの問題がこれまで以上に厳しいものになると見なされていることを示すものです。

 しかしながら、懸念されることは経済問題のみではありません。2010年に発刊されて以来アウトルックに登場していなかった二つのトレンドは、戦略地政学的な競争(第4位)およびナショナリズムの先鋭化(第8位)です。このことは、国際政治の断片化の増大および人々の間におけるグローバル化に対する反発を示唆するものと言えます。

 アウトルックの調査における回答者の目から見たこれら経済的および政治的な動向の一層の深刻化は、2015年のトレンドの中でリーダーシップの欠如がより目立つ位置に上がっていることで説明がつきます。これは昨年の第7位から2015年の第3位に上昇しています。

 しかし、リーダーたちが直面する問題は、経済および政治のみに限られるものではなく、環境に係るものも含まれます。専門家は、開発途上国における汚染の拡大(第6位)、過酷な異常気象の発生数の増加(第7位)および水問題に警告を促しています。これら全てがグローバルに社会、経済および政治を一層不安定化させる可能性を有しています。

 トップ10の最後を締めるトレンドは、好機であるとともに、難しい課題でもあります。経済分野において健康の重要性が高まっていることは、健康な人々と健康な経済との間の象徴的な繋がりを示唆するものです。同時に、多くの保健制度が人口動態、非伝染性疾病の増加並びに流行病その他の伝染性疾病の脅威の拡大に順応するために直面する困難をも浮き彫りにするものです。しかしながら、テクノロジーがより優れた、より費用対効果の高い医療を提供する可能性を切り開き、その結果として持続可能な経済成長およびより高度な繁栄に導くことができるようになれば、それはリーダーたちには絶好の機会であるとも言えます。

 「 グローバルなリーダーシップの危機は、その他全ての問題に影響する動向のひとつです。この場合に危険なことは、諸国およびリーダーたちが革新および協力を通じて共通の課題に取り組む代わりに、孤立主義、ナショナリズムの美辞麗句および地政学的な権力闘争という古めかしい理論的枠組によって解決策を見出そうとすることです。」

 と、世界経済フォーラムのグローバル・ナレッジ・ネットワークス担当責任者兼シニア・ディレクターである MartinaLarkin氏は述べています。

「 共通する課題に対する新たな解決策を見出す必要性がこれほど明確であったことは、過去に例がありません-もし、私たちがより効果的に自らを組織化することができれば、という場合においてのみではありますが。現在の課題は、グローバルな規模であり、自然と強く関連し、かつ喫緊の対応を要するものであり、全てのステークホルダーがより理解を高

め、より強く協力することによってのみ対処できます」と世界経済フォーラムのマネージングボード・メンバー兼マネージング・ディレクターである Espen Barth Eide氏は述べています。

レポートの全文については、以下のURLでご覧いただけます。

http://wef.ch/outlook15