平成25年「国民健康・栄養調査」の結果を見て

 厚生労働省より平成25年11月に実施した「国民健康・栄養調査」の結果が公表されました。

「国民健康・栄養調査」は、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基礎資料として、国民の身体の状況、栄養摂取量及び生活習慣の状況を明らかにするため、毎年実施しているものです。

〈主な生活習慣に関する 状況 〉

・食事、身体活動・運動、喫煙、睡眠の状況について、性・年齢階級別に見ると、60歳以上で良好な一方、20歳代及び30歳代では課題が見られた。

〈食品群の組合せの状況〉

・3食ともに、穀類、魚介類・肉類・卵・大豆(大豆製品)、野菜を組み合わせて食べている者の割合は、男女ともに年齢が若いほど低い傾向。

〈身体状況に関する 状況 〉

・肥満者の割合について女性は減少傾向にあり、男性は平成23年以降、増加に歯止め。血圧の平均値は男女ともに低下傾向。

〈たばこに関する 状況 〉

・受動喫煙の影響をほぼ毎日受けた者の割合は、平成20年と比べて学校、遊技場を除く全ての場(家庭、職場、飲食店、行政機関、医療機関)で有意に減少。

 

 私がこの発表を見て驚くのは上のまとめの〈主な生活習慣に関する状況〉で60歳以上が良好なのに対し、20歳代および30歳代で課題が見られた事で、具体的には、以下のような結果が出ている事です。

次の表は年代別に「穀類と魚介類・肉類・卵・大豆(大豆製品)と野菜を組み合わせて食べる者の割合」をまとめたものです。3食ともに、穀類、魚介類・肉類・卵・大豆(大豆製品)、野菜を組み合わせて食べている者は男性で38.4%、女性で36.5%となっており、年齢階級別にみると、その割合は男女ともに若いほど低い傾向にあります。

 平成25年国民健康調査1 3食の組み合わせ

40歳代、50歳代、60歳代、70歳代と年齢が上がるごとに3食組み合わせ率が上がっており、食事に関する意識、あるいは昔ながらの和食の組み合わせで健康的な食事を摂っていることが分かります。

次の表は年齢別、性別の「運動習慣のある者の割合」です。

男女とも30歳代で運動習慣のある人の割合が低い事が分かります。一方で70歳代の男性で50%に迫る数字で運動習慣が有る事には少し驚きです。

平成25年国民健康調査2 運動習慣

さらに、年代別、性別の「朝食の欠食率」は以下の通りです。70歳代で朝食を抜く人は3%から4%程度しかいないのに対して20歳代の男性では20%以上の人が朝食を抜いている事は心配になります。

平成25年国民健康調査3 朝食の欠食率

 昨日(平成26年12月14日)の衆議院総選挙の投票率が過去最低の52%程度と言う報道がされていますが、若い世代での政治に関する参加意識の弱さを感じますが、自分自身の健康についての意識も弱いのではないかと非常に心配です。

 

 なお、ここに取り上げましたことは私が今回の発表を見て、意外だったことの記載ですので、それ以外の項目例えば、世代別の一日の歩数、肥満者の割合、糖尿病の可能性、咀嚼力の問題、飲酒禁煙等の項目については、年代別にそれなりの数字が表れており、高齢者には年齢なりの健康課題がある事は付け加えておきます。

 

詳細は、厚生労働省のホームページをご参照願います。

 

2014年12月15日 | カテゴリー : 社会保障 | 投稿者 : naruse163

GPIF 運用ポートフォリオの変更とそのリスク

事実上選挙は始まっていますが、社会保障は大きな争点となります。

そんな中で社会保障審議会の年金部会を傍聴しましたので、その内容を共有したいと思います。

image

 

第29回社会保障審議会 年金部会が開催されたのは11月19日、丁度イチョウ並木がきれいになっていた晴天の日でした。

 

第29回では大きな二つのテーマが討議されましたが、ここではGPIFのポートフォリオ変更について取り上げます。

新聞等で報道されていますが、GPIFでは運用している年金資金の運用ポートフォリオつまり、どこにどれだけの比率で分散投資するかと言う投資の方針を変更しました。

具体的には、以下の通りとなります。

GPIFポートフォリオの変更

この変更は、今後年金財政を考えたときに現在の国債に高い比重を置いた運用方針では年金支給財源が不足してゆくとの危惧から来ており、変更後のポートフォリオにより年1.7%の運用を目指すと設定した上での変更となります。

 

ただし、ここで問題になるのはリスクです。出席されていた有識者の委員の方からもその点に多くの質問が出ていました。国債についてはローリターンでは有りますが、ローリスクであり元本が減額になることはよほどのことが無い、ある意味では保証されていると言った投資先で有ります。一方で、ハイリターンを目指す株式投資ではリスクは高くなります。

GPIFでは専門家にその運用について委託をしており、その専門家からはリスクについて次の様な表が示されておりました。

GPIF運用の確率

運用予測については正規分布で示すことが出来、左側の斜線が入った部分が、名目賃金上昇率を下回るリスクとなります。ある程度リスクを冒さないと高い運用は目指すことが出来ない事は事実であります。

新聞やTVの報道でも、大衆の関心を煽るような見出しでの報道は有りますが、もう一歩あるいは二歩踏み込んで、リターンとリスクの関係をわかりやすく国民に伝えることをしないと、国民をミスリードするような気がします。国民もそのような報道を求める姿勢が重要だと考えます。

 少子高齢化で財政的に難しくなる年金資金、この運用の具体的アクションはアベノミクスにも大きく関係してきます。どれだけの金額を具体的にどの株に投資するかは株価に直接的に影響するため、公開されておりませんが既にポートフォリオの変更は開始されており、それが今の株価上昇の一つの原因になっているのではと推測します。(この部分は社会保障審議会の中の話では有りませんが)

 

どうお考えになりますか?

詳細は、厚生労働省のホームページで、社会保障審議会、年金部会をたどり平成26年11月19日実施の社会保障審議会、年金部会の資料で読むことが出来ます。興味のある方は是非ご覧ください。

 

2014年11月29日 | カテゴリー : 社会保障 | 投稿者 : naruse163

世界的課題の展望 (Global Agenda Outlook 2015 by World Business Forum)

 World Business Forumが毎年発表してるGlobal Agenda Outlookの2015年版が11月7日に発表されました。日本では、衆議院の解散が決まり、14日の投票日に向けて各党の動きが活発になっていますが、私としては、日本社会の動向あるいは課題が世界の動向および課題とどの様に関連しているのかを見ておきたいと思っており、今回のWorld Business Forumの発表を共有したいと思います。以下、WBFで発表されている日本語版のまとめです。

 

 2014年11月7日 スイス、ジュネーブ-本日発行されたグローバル・アジェンダ・アウトルックは、一層深刻化しつつある所得格差および失業の増加が2015年のトレンドのトップ10位中の首位に位置するとしています。今年の調査では、これらの積年の経済問題がさらに政治および環境面に拡大する懸念を含んでいます。

 これらのトレンドは、世界経済フォーラムのグローバル・アジェンダ・カウンシル・ネットワークおよびフォーラム内の他のコミュニティに属する約1,800名もの専門家を対象として、今後12~18ケ月間にリーダーが専心せざるを得ないと信じる事項について実施した調査に基づくものです。

2015年のトレンドのトップ10位は、以下になります:

1.所得格差の深刻化  Deepening income inequality

2.失業の増大の継続  Persistent jobless growth

3.リーダーシップの欠如 Lack of leadership

4.戦略地政学的な競争の激化 Rising geostrategic competition

5.議会制民主主義の弱体化 Weakening of representative democracy

6.開発途上国における汚染の拡大 Rising pollution in the developing world

7.過酷な異常気象の発生数の増加 Increasing occurrence of severe weather events

8.ナショナリズムの先鋭化 Intensifying nationalism

9.水問題の拡大 Increasing water stress

10.経済分野における健康重要性の増大 Growing importance of health in the economy

 

 このリストのトップに格差および失業が目立っているのは、賃金の低迷が、成長および雇用機会を妨げる一因となり、格差が根強く残るという悪循環を生み出しており、これらの問題がこれまで以上に厳しいものになると見なされていることを示すものです。

 しかしながら、懸念されることは経済問題のみではありません。2010年に発刊されて以来アウトルックに登場していなかった二つのトレンドは、戦略地政学的な競争(第4位)およびナショナリズムの先鋭化(第8位)です。このことは、国際政治の断片化の増大および人々の間におけるグローバル化に対する反発を示唆するものと言えます。

 アウトルックの調査における回答者の目から見たこれら経済的および政治的な動向の一層の深刻化は、2015年のトレンドの中でリーダーシップの欠如がより目立つ位置に上がっていることで説明がつきます。これは昨年の第7位から2015年の第3位に上昇しています。

 しかし、リーダーたちが直面する問題は、経済および政治のみに限られるものではなく、環境に係るものも含まれます。専門家は、開発途上国における汚染の拡大(第6位)、過酷な異常気象の発生数の増加(第7位)および水問題に警告を促しています。これら全てがグローバルに社会、経済および政治を一層不安定化させる可能性を有しています。

 トップ10の最後を締めるトレンドは、好機であるとともに、難しい課題でもあります。経済分野において健康の重要性が高まっていることは、健康な人々と健康な経済との間の象徴的な繋がりを示唆するものです。同時に、多くの保健制度が人口動態、非伝染性疾病の増加並びに流行病その他の伝染性疾病の脅威の拡大に順応するために直面する困難をも浮き彫りにするものです。しかしながら、テクノロジーがより優れた、より費用対効果の高い医療を提供する可能性を切り開き、その結果として持続可能な経済成長およびより高度な繁栄に導くことができるようになれば、それはリーダーたちには絶好の機会であるとも言えます。

 「 グローバルなリーダーシップの危機は、その他全ての問題に影響する動向のひとつです。この場合に危険なことは、諸国およびリーダーたちが革新および協力を通じて共通の課題に取り組む代わりに、孤立主義、ナショナリズムの美辞麗句および地政学的な権力闘争という古めかしい理論的枠組によって解決策を見出そうとすることです。」

 と、世界経済フォーラムのグローバル・ナレッジ・ネットワークス担当責任者兼シニア・ディレクターである MartinaLarkin氏は述べています。

「 共通する課題に対する新たな解決策を見出す必要性がこれほど明確であったことは、過去に例がありません-もし、私たちがより効果的に自らを組織化することができれば、という場合においてのみではありますが。現在の課題は、グローバルな規模であり、自然と強く関連し、かつ喫緊の対応を要するものであり、全てのステークホルダーがより理解を高

め、より強く協力することによってのみ対処できます」と世界経済フォーラムのマネージングボード・メンバー兼マネージング・ディレクターである Espen Barth Eide氏は述べています。

レポートの全文については、以下のURLでご覧いただけます。

http://wef.ch/outlook15

平成28年10月の年金改定に向けての討議

昨日(2014年11月19日)の第28回社会保障審議会年金部会で、今後の年金に関する重要な方向が出ております。まとめの中で重要と思われる点をボールドで強調してみると以下の様になります。

 

① 労働参加の促進とそれを通じた年金水準の確保

○ 労働力人口が減少し、平均寿命が伸長する中、国民一人一人が健康で安定した生活を営み、経済社会も持続的に発展していくためには、年齢や性別に関わりなく就労できる機会の拡大を進め、労働参加を促進するとともに、それを反映した年金制度に改革することで、安心できる給付水準の確保が図られることとなる。

○ この観点からは、就労インセンティブを阻害しない制度設計、働き方の選択に中立的な制度設計、より長く働いたことが年金給付に適確に反映される制度設計が求められる。

 

② 将来の世代の給付水準の確保への配慮

○ 将来の保険料負担水準を固定した制度設計のもとで、現在よりさらに少子・高齢化の進む将来の世代の給付水準を確保するためには、マクロ経済スライドによる年金水準の調整を早期に確実に進めていくことと、年金制度を支える生産活動とその支え手を増やすこと以外に方法はない。

○ この観点からは、①で前述した制度設計に加え、年金の改定(スライド)ルールの見直しによって年金水準の調整を極力先送りしないような配慮が求められる。

 

③ より多くの人を被用者年金に組み込み、国民年金第1号被保険者の対象を本来想定した自営業者に純化

○ 国民年金は元来被用者年金の適用対象とならない自営業者をカバーする制度として創設されたが、現在、第1号被保険者のうち自営業者の占める割合は2割程度に過ぎず、被用者年金の適用を受けない給与所得者が多数を占めるようになっている。

○ この問題は、これまで被用者にふさわしい保障を確保する観点から論じられてきたが、これに加えて、将来の年金水準の確保や働き方に中立的な制度設計、年金制度における同一世代内の再分配機能の強化等の観点からも有効性と必要性が再認識された。

 

④ ①~③を通じた基礎年金の水準低下問題への対応

○ 年金水準は厚生年金の標準的な年金額(夫婦の基礎年金と報酬比例年金の合計額)を指標として評価する仕組みとなっているが、基礎年金は就労形態を問わず全国民に共通して保障される仕組みであること、被用者年金制度においては報酬の低い者にも高い者にも共通する再分配機能が働く給付設計となっていることを踏まえると、基礎年金のスライド調整期間が長期化し、その水準が相対的に大きく低下する問題は放置できない

○ 財政検証に際して行ったオプション試算からは、これまで述べてきた①~③の措置はいずれも基礎年金の水準低下幅の拡大を防止し、あるいは水準回復につながる効果が期待でき、この観点からも有効性と必要性が再認識された。

 

⑤ 国民合意の形成とスピード感を持った制度改革の実施

○ ライフコースの多様化、制度改革が及ぼす効果や影響がライフステージにより異なることなどから、その内容や必要性について、丁寧な説明による国民合意の形成を図りつつ改革を進めていく必要がある。また、制度が経済社会に及ぼす悪影響の回避や適確な運用体制の整備にも配慮が必要なことは言うまでもない。

○ しかしながら、我が国の少子・高齢化等、経済社会の変化のスピードが急速であることを考えると、それに対応した制度の見直しはスピード感を持って行うこと、社会の変化のスピードに対応できなかった場合には、見えない別の形でコストを要することになることも念頭に置き、できることから機を逸せず不断に改革を進めていくことが求められる。

 

これらをさらに私なりにまとめると

①項では、年金加入者数を増やすことが年金水準の維持につながる事の論議で、年齢幅の拡大、就業の形(短期)の拡大が論議となります。具体的には、非正規雇用者についても厚生年金に加入か可能(加入条件幅の拡大)となり、老後の準備の一部となる、あるいは70歳まで働く人を増やし、働いた分の年金増額が出来るような仕組みを作る事です。

②項は年金受給が始まっている世代についてはつらい話となります。将来の世代の為に、我慢をしなければならない、具体的にはマクロ経済スライド制により年金が減額されることを受け止める必要が出てきます。

③項は私としてはすこし驚きの内容です。 国民年金第一号被保険者の内、自営業者の占める割合が20%しか無い事は驚きでした。また、年金を受けている同一世代内での再分配の検討も行い、アメリカやカナダの様に高所得者については減額してもらう方向も出てきています。

④項はある意味では①~③項のまとめで、⑤項も重要な項目です。国民一人ひとりにとって条件が異なり、複雑な内容をいかに客観的に冷静に理解してもらうか、かつそれを時間を掛け過ぎずに行うかは、結構難しい問題です。その意味では、私共の様な存在が色々な方法で、情報発信を行ってゆくかも重要なのかと思います。

 

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短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大

 厚生労働省 第24回社会保障審議会年金部会において 「短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大」についての検討がされています。

 平成28年10月施行の枠組みとして

○ 被用者でありながら被用者保険の恩恵を受けられない非正規労働者に被用者保険を適用し、セーフティネットを強化することで、社会保険における「格差」を是正する。

○ 社会保険制度における、働かない方が有利になるような仕組みを除去することで、特に女性の就業意欲を促進して、今後の人口減少社会に備える。

○ 社会保障・税一体改革の中で、3党協議による修正を経て法律(公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律(年金機能強化法))が成立した。

 としており、現行週労働時間30時間以上に適用された被用者保険について①週20時間以上②月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)③勤務期間1年以上見込み④学生は適用除外⑤従業員 501人以上の企業の条件に適用される様変更することを検討しており3年以内に検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講じる。 としています。

 安倍首相の掲げる3本の矢の3本目の「成長戦略」の中の女性が輝く日本をつくるための政策として掲げている「待機児童の解消」「職場復帰・再就職の支援」「女性役員・管理職の増加」に関連してくるものであり、同時に社会保険制度の根幹である現役社員総数の確保につながるものとなります。

 

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共働き世帯の増加とその状況

 厚生労働省の社会保障審議会で短時間労働者の社会保険加入についての論議がされていますが、その中で共働き世帯の増加についての状況報告がされています。

共働き世帯の増加

 左のグラフでは専業主婦と共働き世帯数がこの30年間で逆転したと言う結果が出ています。昔、男には家から出ると7人の敵が居ると言われ、男が外に出て稼ぎ、妻が家庭を守ると言う永年の家族の形が有りましたが、これが大きく変わってきている事が分かります。2012年で共働き(青線)が1065万世帯と専業主婦(緑線)が745万世帯となっており、合計1800万世帯の6割弱が共働き世帯になっており、その傾向がさらに拡大してゆく勢いに見えます。

  一方で右の表では妻の働く状況はいわゆる130万円の壁の影響を含めて種々の理由により、60%以上が非正規社員となっていることが分かります。

  本WEB内の9月30日付のニュースにも投稿しておりますが、

○ 被用者でありながら被用者保険の恩恵を受けられない非正規労働者に被用者保険を適用し、セーフティネットを強化することで、社会保険における「格差」を是正する。

○ 社会保険制度における、働かない方が有利になるような仕組みを除去することで、特に女性の就業意欲を促進して、今後の人口減少社会に備える。

と言った課題の対策として平成28年10月に短時間労働者についても年金制度への加入が開始されるように討議が行われております。

 

2014年11月6日 | カテゴリー : 社会保障 | 投稿者 : naruse163

カナダ年金のクロールバック(払戻し)制度の仕組み

 カナダの年金は、税方式の老齢保障年金(OAS)と社会保険方式のカナダ年金制度(CPP)がありその上にそれ以外の私的所得の有る構造になっています。

 そのうちの、カナダの老齢保障年金(OAS)は、全額税財源により支給される年金制度ですが、受給者のうち、OAS以外の所得額が一定額(月額5,913カナダドル(約55.6万円))を超える場合は、所得額のうち当該一定額を超える部分の額の15%に相当する額を税として国に払い戻す(実際には、翌年7月から翌々年6月のOASの給付から控除する)制度があり、クロ-バックと呼ばれています。

Canadian clowback

 

 OASの払戻し(クローバック) ・・・カナダ老齢保障年金(OAS)の受給者であって、OAS以外の所得額が一定額(月額5,913カナダドル(約55.6万円))を超える場合は、当該所得額のうち一定額を超える部分の額の15%に相当する額を税として国に払い戻す仕組みになっています。

 

出典:日本年金機構 社会保障審議会資料

アメリカ年金のベンドポイントの仕組み

 アメリカ年金においては、日本の基礎年金(国民年金)に相当する定額給付が存在せず、厚生年金に相当する年金となっています。その再分配効果を高めるため、年金額の算定基礎となる平均賃金が高い場合に、給付率を減少させる仕組みが設けられており、この仕組みはベントポイントと呼ばれています。

US bent point

 図面の中に小さな注釈で書かれていますが、アメリカ年金の場合、給付算定式の屈折点(ベントポイント、816ドルおよび4917ドル)は、年金の所得代替率が平均賃金の者につき約41%、低賃金(平均所得の45%)の者につき約55%、社会保障税課税上限の高賃金の者につき約27%になる様に設定されています。

対象者 被用者および月所得400ドル以上の自営業者
保険料率

被用者:被用者本人6.2%、雇用者6.2% 合計12.4%

自営業者:12.4%
最低加入期間 40四半期(10年間に相当)
満額加入期間 35年間
支給開始年齢 66歳(2027年までに67歳に引き上げ)
国庫負担 通常国庫負担は行われない

 

年金額算定式は以下の通りとなります。

基本年金(月額)=0.9A +0.32B +0.15C

Aとはスライド済平均賃金月額である815ドルまでの分

Bとはスライド済平均賃金月額816ドルを超えて4917ドルまでの部分

Cとはスライド済平均賃金の4917ドルを超えた部分

 

出典:厚生労働省 社会保障審議会 年金部会

平成24年度 国民医療費の現状

 10月8日に平成24年度国民医療費の現状についての発表が有りました。

 平成24年度の国民医療費は39兆2,117億円、前年度の38兆5,850億円に比べ6,267億円、1.6%の増加。人口一人当たりの国民医療費は30万7,500円、前年度の30万1,900円に比べ1.9%、額にして一人当たり5600円増加しています。

国民医療費の国内総生産(GDP)に対する比率は8.30%(前年度8.15%)、国民所得(NI)に対する比率は11.17%(同11.05%)となっています。

 

国民医療費

 

 上の図を見てもお分かりの通り、非常な勢いで伸びています。その中でも、一番の注目点は年齢別の医療費だと思います。

 年齢階級別国民医療費を性別にみると、0~14歳の男は1兆3,657億円(構成割合7.2%)、女は1兆1,148億円(同5.5%)、15~44歳の男は2兆3,458億円(同12.4%)、女は2兆8,609億円(同14.0%)、45~64歳の男は5兆422億円(同26.8%)、女は4兆3,962億円(同21.6%)、65歳以上の男は10兆930億円(同53.6%)、女は11兆9,930億円(同58.9%)となっています。

 国民全員の医療費を合計しても金額が多すぎて感覚が掴みにくいと思いますが、人口一人当たり国民医療費をみると、65歳未満の男は17万9,200円、女は17万4,900円、65歳以上の男は76万6,000円、女は68万800円となっています。

  9月29日のブログにも書きましたが、「健康寿命」と「平均寿命」の差が大きな社会問題であり、如何に寿命をまっとうするまで健康でいることが重要かと言うことを改めて感じます。65歳未満の男性は年間平均18万円弱の医療費で済んでいるのに対して、65歳以上の男性は77万円近い費用を毎年平均してかけていると言う事で、これが個人の心配でもあり、国の社会保障財政としても大きな心配でもあります。

 私たち一人ひとりが自覚を持ち、生活習慣を見直し、健康で医者や薬のお世話にならないで済む楽しい元気な生活を送りたいものです。

 

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就業率の国際比較

お厚生労働省の社会保障審議会で高齢期の就労と年金受給の在り方についての審議が行われていますが、その中で興味深い表が有りましたので、ここに示したいと思います。この表は就業率の国際比較(2012年)となります。 就業率の国際比較

  表の中の数字の単位は%です。日本の列の一番上、75.4とは日本の男女合計で55歳~59歳の人は75.4%の人が就労していると言う意味になります。

 この表を見ると、日本は働き者の国と言う事が分かります。特に60歳~64歳の比較、さらに65歳から69歳の比較で欧米に比べて就労の比率が高くなっています。65歳から69歳の男性で日本は46.9%と半分弱の人が働き続けているのに対して、フランスでは7.1%の人しか働いていない事が分かります。

この事は、定年の年齢および年金受給開始年齢に関係してきます。日本は65歳までの雇用義務化が進んでおり就労率が上がってきています。一方で、フランスでは、仕事を早めに引退し定年後を楽しむ傾向が有るのだと思います。

また、就業規則に年齢の要素を入れてはいけない法律が有るアメリカでは、年齢と退職の関連性は直接的には関係してきません。意外なのはドイツです。フランス程では有りませんがフランス、イタリアに続いて就労年齢が低い傾向がみられます。

一方、韓国の場合は日本よりも就労年齢が高くなっています。特に65歳~69歳では日本より高くなっています。 各国での働くことに対する意識が表れている興味深い数字だと思います。