年金制度改革のポイント (4つの残課題)

平成16年の年金改革により定めら事項に関しての改定がなされておりますが、年金のさらなる長期的な持続可能性を強固にし、セーフティネット機能を強化する改革に向けて国民会議報告書で取り上げられた残課題があります。この点について、厚生労働省年金局の方から話を聞く機会を得ましたので、そのお話について共有したいと思います。 1.マクロ経済スライドの見直し

  • デフレ経済からの脱却を果たした後においても、実際の物価や賃金の変動度合いによっては、マクロ経済スライドによる調整が十分に機能しない事が短期的に生じる。他方で、早期に年金水準の調整を進めた方が、将来の受給者の給付水準は相対的に高く維持。
  • 仮に、将来再びデフレの状況が生じたとしても、年金水準の調整を計画的に進める観点から、マクロ経済スライドの在り方についての検討を行う事が必要。
  • 基礎年金の調整機関が長期化し水準が低下する懸念に対し、基礎年金と報酬比例部分のバランスに関しての検討や、公的年金の給付水準の調整を補う私的年金での対応への支援も合わせた検討が求められる。

2.短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大

  • 被用者保険の適用拡大を進めてゆくには、制度体系の選択の如何にかかわらず必要。適用拡大の努力を重ねることは三党の協議の中でも共有されており、適用拡大の検討を引き続き継続してゆくことが重要。

3.高齢期の就労と年金受給の在り方

  • 2009年の財政検証で年金制度の持続可能性が確認。また、2025年までかけて厚生年金の支給開始年齢を引き上げている途上。直ちに具体的な見直しを行う環境にはなく、中期的な課題。
  • この際には、雇用との接続や他の社会保障制度との整合性など、幅広い観点からの検討が必要となることから、検討作業については速やかに開始しておく必要。
  • 高齢化の進行や平均寿命の伸長に伴って、就労時間を伸ばし、より長く保険料を拠出してもらうことを通じて年金水準の確保を図る改革が、多くの先進諸国で実施。日本の将来を展望しても、65歳平均余命は更に4年程度伸長し、高齢者の労働力率の上昇も必要。
  • 2004年改革によって、将来の保険料率を固定し、固定された保険料率による資金投入額に給付総額が規定されているため、支給開始年齢を変えても。長期的な年金給付総額は変わらない。
  • したがって、今後、支給開始年齢の問題は、年金財政の観点と言うよりは、一人ひとりの人生や社会全体の就労と非就労(引退)のバランスの問題として検討されるべき。生涯現役社会の実現を展望しつつ、高齢者の働き方と年金受給の組み合わせについて、他の先進諸国で取り組まれている改革のねらいや具体的な内容も考慮して議論を進めてゆくことが必要。

4.高所得者の年金給付の見直し

  • 世代内の再分配機能を強化する検討については、年金制度だけではなく、税制での対応、各種社会保障制度における保険料負担、自己負担や標準報酬上限の在り方など、様々な方法を検討すべき。また、公的年金等控除を始めとした年金課税の在り方について、見直しを行ってゆくべき。

 以上4点についてが残課題と位置づけられております。 それぞれが我々および次の世代の生活に直結した内容になっており、この検討方向により支給される年金額に多きな変化が出てくることになり、所謂、第一の人生あるいは第二の人生の後の生活の仕方に大きく影響してくる内容だと認識しており、まさに自分の問題です。 年金は現役世代が納める保険料収入+積立金+国庫負担の総額と支給する年金金額がバランスする(=同額になる)事が大前提です。少子高齢化に伴い現役世代の絶対数が少なくなってゆく中では、保険料収入の拡大を期待する事は難しく、さらに国庫負担については2分の1と決められた中では、支給年金金額を下げてゆくことによリ収支のバランスを取るしか方法は有りません。結果、年金金額は減る方向になります。 その事実を正しく認識する事、その上で自分としては何が出来るかを考え、生活してゆくことが求められています。 政府の各部門行われている論議に注目したいと考えます。

 

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平成28年10月の年金改定に向けての討議

昨日(2014年11月19日)の第28回社会保障審議会年金部会で、今後の年金に関する重要な方向が出ております。まとめの中で重要と思われる点をボールドで強調してみると以下の様になります。

 

① 労働参加の促進とそれを通じた年金水準の確保

○ 労働力人口が減少し、平均寿命が伸長する中、国民一人一人が健康で安定した生活を営み、経済社会も持続的に発展していくためには、年齢や性別に関わりなく就労できる機会の拡大を進め、労働参加を促進するとともに、それを反映した年金制度に改革することで、安心できる給付水準の確保が図られることとなる。

○ この観点からは、就労インセンティブを阻害しない制度設計、働き方の選択に中立的な制度設計、より長く働いたことが年金給付に適確に反映される制度設計が求められる。

 

② 将来の世代の給付水準の確保への配慮

○ 将来の保険料負担水準を固定した制度設計のもとで、現在よりさらに少子・高齢化の進む将来の世代の給付水準を確保するためには、マクロ経済スライドによる年金水準の調整を早期に確実に進めていくことと、年金制度を支える生産活動とその支え手を増やすこと以外に方法はない。

○ この観点からは、①で前述した制度設計に加え、年金の改定(スライド)ルールの見直しによって年金水準の調整を極力先送りしないような配慮が求められる。

 

③ より多くの人を被用者年金に組み込み、国民年金第1号被保険者の対象を本来想定した自営業者に純化

○ 国民年金は元来被用者年金の適用対象とならない自営業者をカバーする制度として創設されたが、現在、第1号被保険者のうち自営業者の占める割合は2割程度に過ぎず、被用者年金の適用を受けない給与所得者が多数を占めるようになっている。

○ この問題は、これまで被用者にふさわしい保障を確保する観点から論じられてきたが、これに加えて、将来の年金水準の確保や働き方に中立的な制度設計、年金制度における同一世代内の再分配機能の強化等の観点からも有効性と必要性が再認識された。

 

④ ①~③を通じた基礎年金の水準低下問題への対応

○ 年金水準は厚生年金の標準的な年金額(夫婦の基礎年金と報酬比例年金の合計額)を指標として評価する仕組みとなっているが、基礎年金は就労形態を問わず全国民に共通して保障される仕組みであること、被用者年金制度においては報酬の低い者にも高い者にも共通する再分配機能が働く給付設計となっていることを踏まえると、基礎年金のスライド調整期間が長期化し、その水準が相対的に大きく低下する問題は放置できない

○ 財政検証に際して行ったオプション試算からは、これまで述べてきた①~③の措置はいずれも基礎年金の水準低下幅の拡大を防止し、あるいは水準回復につながる効果が期待でき、この観点からも有効性と必要性が再認識された。

 

⑤ 国民合意の形成とスピード感を持った制度改革の実施

○ ライフコースの多様化、制度改革が及ぼす効果や影響がライフステージにより異なることなどから、その内容や必要性について、丁寧な説明による国民合意の形成を図りつつ改革を進めていく必要がある。また、制度が経済社会に及ぼす悪影響の回避や適確な運用体制の整備にも配慮が必要なことは言うまでもない。

○ しかしながら、我が国の少子・高齢化等、経済社会の変化のスピードが急速であることを考えると、それに対応した制度の見直しはスピード感を持って行うこと、社会の変化のスピードに対応できなかった場合には、見えない別の形でコストを要することになることも念頭に置き、できることから機を逸せず不断に改革を進めていくことが求められる。

 

これらをさらに私なりにまとめると

①項では、年金加入者数を増やすことが年金水準の維持につながる事の論議で、年齢幅の拡大、就業の形(短期)の拡大が論議となります。具体的には、非正規雇用者についても厚生年金に加入か可能(加入条件幅の拡大)となり、老後の準備の一部となる、あるいは70歳まで働く人を増やし、働いた分の年金増額が出来るような仕組みを作る事です。

②項は年金受給が始まっている世代についてはつらい話となります。将来の世代の為に、我慢をしなければならない、具体的にはマクロ経済スライド制により年金が減額されることを受け止める必要が出てきます。

③項は私としてはすこし驚きの内容です。 国民年金第一号被保険者の内、自営業者の占める割合が20%しか無い事は驚きでした。また、年金を受けている同一世代内での再分配の検討も行い、アメリカやカナダの様に高所得者については減額してもらう方向も出てきています。

④項はある意味では①~③項のまとめで、⑤項も重要な項目です。国民一人ひとりにとって条件が異なり、複雑な内容をいかに客観的に冷静に理解してもらうか、かつそれを時間を掛け過ぎずに行うかは、結構難しい問題です。その意味では、私共の様な存在が色々な方法で、情報発信を行ってゆくかも重要なのかと思います。

 

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平成27年度 主な税制改正要望の概要 (年金に関して)

 平成27年度予算についての各省庁からの概算要求が出て、初めて100兆円の大台を超える予算となるかとの議論が開始されますが、それに関連して各省から税制改正の要望も出てきており、厚生労働省としての要望の概要の発表がありました。

 ここでは、私共の関心が高い年金の関する内容を取り上げたいと思います。

 以下の通り、企業年金制度についての税制措置について要望が出されています。

 企業年金制度等の見直しに伴う税制上の所要の措置(所得税、法人税、個人住民税、法人住民税、事業税) 要望内容 確定拠出年金制度をはじめとする企業年金制度等については、施行後約10年を経て見直しの時期になるとともに、「「日本再興戦略」改訂2014」においても国民の自助努力促進の観点から制度の見直しを行うこととされていることから、現在、社会保障審議会企業年金部会において制度のあり方の検討を行っており、その結果を踏まえて税制上の所要の措置を講ずる。

現状(要望の背景)

○ 国民の老後所得については、公的年金と私的年金を組み合わせた形での制度的保障が国際的な流れにある中で、我が国においても企業年金等の役割は高まる傾向にあり、中小企業や一般企業が取り組みやすい制度改善といった、企業が企業年金を実施・継続するための見直しが求められている。

○ また、若年層や女性を中心に、ライフコースが多様化し、働き方の複線化・多様化が顕著になる中、個々人のライフコースに合わせた老後の生活設計を支える仕組みが必要。 加えて、「貯蓄から投資へ」という流れも踏まえて、確定拠出年金制度等の見直しを検討する必要がある。

○ このため、平成26年6月から、「社会保障審議会企業年金部会」において、企業年金制度等のあり方について議論を開始したところであり、先般の部会で以下の通り検討課題を整理したところ。

Ⅰ 企業年金等の普及・拡大 ①一般企業向けの取組 ②中小企業向けの取組

Ⅱ ニーズの多様化への対応 ②    柔軟で弾力的な制度設計 ②ライフコースの多様化への対応

Ⅲ ガバナンスの確保

Ⅳ その他 ①    現行制度の改善 ②    公的年金制度や税制等との関係 ○本年秋以降、上記検討課題に沿って同部会において具体的な検討を行う予定。

  私のブログで7月31日に企業年金の事を取り上げましたが、定年後に十分な年金を受け取り豊かな老後を過ごせるようにするには公的年金に上乗せする企業年金が欠かせない制度であり、特に受給額の点からも現役世代にとって特に重要な課題です。ただし、企業年金の普及は会社員全体の40%と普及が進んでいるとは言えず、企業がリスクを負担するのか?社員がリスクを負担するのか?課題があります。今年検討している新制度はその中間のハイブリッド型の様でそれがこの税制改正に関係してきているのだと思います。

平成27年の成人の日を迎えて

  昨日は成人の日で今年新たに126万人が新成人として成人の日を迎えたようです。

 この新成人数は21年ぶりの増加とニュースでは報道しておりましたが、そのデータを裏付けるデータとして元旦に厚生労働省から平成26年の人口動態統計が発表されていました。

 

平成26年人口動態統計

 平成26年に生まれた人は100万人丁度、一方で亡くなった方が127万人なっており、平成17年に死亡者数が出生者数を逆転する事が発生してその傾向が続いていることが分かります。

 上の図の左上、ベビーブームだった昭和22年(1947年)に生まれた人が270万人、その次の世代の出生のピークが昭和50年(1975年)にありその世代の子供たちが40年経って今成人者数として21年ぶりに増加したと言う形で表れている事になります。ただし増加は一時的な物で、傾向としては少子化の傾向は急速に進んでいることがこの図から良くわかります。

 

 人口動態統計には結婚件数と離婚件数も含まれており、結婚は第二次ベビーブームの直前の昭和48年(1973年)にピークとなりその後徐々に減少傾向です。昨年平成26年8月に社会保険労務士事務所プラムアンドアップルを開設し、社会保障に関するブログを書いていますが、このような統計資料が発表されるたびに少子高齢化が確実に進んでいる事を確認されるような気持ちになります。

 

 

2015年1月13日 | カテゴリー : 社会保障 | 投稿者 : naruse163

平成26年版労働経済白書が閣議報告されました。

 昨日(9月12日)の閣議で厚生労働省から「平成26年版労働経済の分析」(通称「労働経済白書」)が発表されました。

 安倍首相も使っている言葉として、我が国が世界に誇る最大の資源は「人材」である言う言葉の通り、日本の安定的発展のためには若年層から熟年層までの人材活用が重要であるとの認識の下、その能力を存分に発揮できる「全員参加の社会」の構築が必要だという観点から報告書がまとめられています。 すこし長くなりますが、報告全体のまとめの部分について以下に共有したいと思います。

まとめ

我が国経済は、2012年年央から欧州政府債務危機に伴う世界景気の減速等により弱い動きとなったものの、2013年に入って、経済政策への期待等から株高が進んだこと等を背景に企業や家計のマインドが改善し、内需がけん引する形で、景気は持ち直しに転じ、足下では緩やかな回復基調にある。生産や企業収益が改善する中で、雇用情勢は着実に改善した。雇用者が前年差約50万人と大きく増加する中で、完全失業率は着実な低下を続け、2014年3月には3.6%となり、リーマンショック前の水準まで回復した。また、2013年11月には有効求人倍率が6年1か月ぶりに1倍を超え、2014年3月には1.07倍となった。こうした中で、経済の好循環を持続するためにも、企業収益の改善を家計へ所得として還元し、さらなる消費拡大につなげていく取組が求められている。「平成26年版労働経済の分析」では、こうした昨年度を中心とした労働経済の状況を分析するとともに、賃金の上昇を可能とする環境の整備に向けて検討した。さらに、「人材こそが世界に誇る最大の資源である」という認識の下、「人材力の最大発揮に向けて」と題し、企業の人材マネジメント、労働者のキャリアの形成に関して分析を行った。

 第1章では、「労働経済の推移と特徴」と題し、2013年度における景気回復過程について、雇用面を中心に概観するとともに、景気回復を着実なものとするための経済の好循環の確立に向けた課題を分析した。2013年に入り企業の生産(活動)水準が高まる中で、所定外労働時間のみならず、非製造業を中心に就業者数が大きく増加した。企業収益も改善し、賞与については、夏季賞与・年末賞与ともに数年ぶりの増加となった。こうした中で消費支出も増加し、経済の好循環に向けた動きがみられている。また、為替の円安方向の動き等により物価が上昇する中、賃金も持ち直しの動きをみせている。賃金については、景気回復に伴い企業収益・雇用情勢の改善がみられたこと、さらに「経済の好循環実現に向けた政労使会議」において、政労使の三者が企業収益の拡大を賃金上昇につなげていくという共通認識に至り、これを踏まえた労使間での交渉の結果、2014年の春季労使交渉において、定期昇給相当分の維持に加え、多くの企業で賃上げの回答が行われる等、明るい動きがみられている。こうした動きに期待するとともに、人的資本の蓄積による労働の質の向上を図り、労働生産性を高めることにより、更なる賃金上昇が期待される。 今後は景気の着実な回復に向け、企業収益の拡大が速やかに賃金上昇や雇用拡大につながり、消費の拡大や投資の増加を通じて更なる企業収益の拡大に結び付くという経済の好循環を確実なものとしていくことが重要である。

 第2章では、「企業における人材マネジメントの動向と課題」と題し、企業を取り巻く環境変化の中で、企業がどのように人材を管理・育成し、競争力を高めていくのか、企業の人材マネジメントについて分析を行った。 進展するグローバル化、ITを始めとする技術革新の影響や経営の不確実性の増大等によって企業を取り巻く競争環境が変化する中で、企業は置かれている環境、直面する課題に応じて、正規雇用労働者・非正規雇用労働者といった二分法ではとらえることのできない多様な人材を組み合わせて事業を展開している。 我が国の企業では、外部環境の変化に伴い、賃金決定要素の変更や賃金プロファイルのフラット化などのマネジメント面での変化がみられる。我が国では内部労働市場重視の企業が多くみられるが、外部労働市場重視の企業と比べて、労働生産性や就労意欲を高めるための雇用管理事項に取り組んでいる割合が高い。また、多様な正社員の普及により、様々な人々がより満足度の高い働き方を選択することが可能となり、企業における人材の確保や生産性の向上に資するものと考えられる。多様な人材を活用する中で、人材育成は企業経営上の重要な課題と考えられており、正規雇用労働者は、若年層での計画的・系統的なOJT、中堅層では多様な人事異動等により、企業内でのキャリア形成が図られている。一方、正規雇用労働者に比べると、非正規雇用労働者への能力開発機会は乏しくなっている。企業において、非正規雇用労働者がその意欲と能力に応じて正規雇用労働者への転換を始めとする活躍の機会が積極的に広がることが期待される。労働者の就労意欲が高い企業は、労働者の定着率や労働生産性、さらに売上高経常利益率も高い傾向にある。このような企業では、正規雇用労働者・非正規雇用労働者を問わず、広範な雇用管理に取り組むとともに、人材育成に対しても積極的に取り組んでいる。さらに、企業の要となる人材として管理職層に着目すると、仕事を通じた経験が管理職層に必要とされる能力を高めていく。

 第3章では、「職業生涯を通じたキャリア形成」と題し、我が国における職業キャリアの現状や動向について概観し、円滑な労働移動を実現するための課題等を分析するとともに、出産・育児、介護等の生涯における出来事と職業キャリア、不本意非正規雇用労働者の正規雇用への移行について分析した。 我が国における職業キャリアの現状をみると、男性では一つの職場で長期間勤務するような長期雇用キャリアが多い一方、職業生涯の中で転職を複数回行うような職業キャリアも決して少なくなく、高所得者を中心に積極的な転職を行う層も存在している。円滑な労働移動を促進していくためには、労働者の自発的な転職が増えるような環境整備が必要であり、そのためには、デフレ脱却により成長産業を中心として名目賃金が上昇していくことが望まれる。また、非自発的な離職を余儀なくされる労働者に対しては、送り出し企業による支援や公共職業訓練等の公的支援の充実が必要であると考えられる。さらに、労働者の職業能力の標準化や見える化により、転職時にその職業能力が十分評価されるような環境づくりも必要であると考えられる。 人口減少、高齢化の進行、女性の一層の企業での活躍への期待、介護問題の深刻化が見込まれるなかで、出産・育児、介護等の生涯における出来事に対応して、健康を維持しながら、職業生活と家庭生活の両立が困難なことによる不本意な離職を防ぎ、それまでに培った職業キャリアを活用し、生涯を通じて希望する働き方が実現することが望まれる。非正規雇用労働者については、特に、正規雇用を希望しながらそれがかなわず、非正規雇用で働く者(不本意非正規)の支援が求められる。前職が非正規雇用の労働者が正規雇用へと移行する際には、前職の職業と同じ職業で移行する割合が最も高くなっている。また、正規雇用へと移行した者の特徴を統計的に分析すると、年齢が若いほど正規雇用への移行可能性が高く、また学卒後の初職の形態、前職での経験、また公的助成による学び直し等が、正規雇用への移行に影響している。

 まとめは以上です。

 この報告は、労働経済白書ですが、社会保障問題と直結した内容であり、注目する必要が有ります。これまで60歳定年制の企業が65歳までの雇用延長を取り入れているものの現実的には社内退職者扱いの要素は多く、現役社員と退職者の壁が有るように感じられます。 年齢とは別の個々の知識・経験を含めた仕事ができるかどうかの能力で評価される仕組みが必要です。かと言って若年層の成長の妨げにはなってはならず、社員全体で成長してゆく事が必要です。これにより、社会保障制度に依存するのではなく、自立する意識が必要だと考えます。

 一方で、女性が活躍できる環境をどのように整えてゆくかが課題で、女性自身のキャリア形成の問題と少子化対策と関連して重要な課題です。 報告書の中にも有りますが、グローバル化の進展により労働環境はグローバルに広がりかつ海外からの労働者の流入も進んできています。 私たち、海外赴任経験を持ち、グローバルに勤務してきた経験者として今後の労働環境の変化とその対応に注目してゆきたいと思います。 報告書の詳細については、厚生労働省ホームページをご覧ください。

 

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2014年9月13日 | カテゴリー : 社会保障 | 投稿者 : naruse163

平成25年「国民健康・栄養調査」の結果を見て

 厚生労働省より平成25年11月に実施した「国民健康・栄養調査」の結果が公表されました。

「国民健康・栄養調査」は、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基礎資料として、国民の身体の状況、栄養摂取量及び生活習慣の状況を明らかにするため、毎年実施しているものです。

〈主な生活習慣に関する 状況 〉

・食事、身体活動・運動、喫煙、睡眠の状況について、性・年齢階級別に見ると、60歳以上で良好な一方、20歳代及び30歳代では課題が見られた。

〈食品群の組合せの状況〉

・3食ともに、穀類、魚介類・肉類・卵・大豆(大豆製品)、野菜を組み合わせて食べている者の割合は、男女ともに年齢が若いほど低い傾向。

〈身体状況に関する 状況 〉

・肥満者の割合について女性は減少傾向にあり、男性は平成23年以降、増加に歯止め。血圧の平均値は男女ともに低下傾向。

〈たばこに関する 状況 〉

・受動喫煙の影響をほぼ毎日受けた者の割合は、平成20年と比べて学校、遊技場を除く全ての場(家庭、職場、飲食店、行政機関、医療機関)で有意に減少。

 

 私がこの発表を見て驚くのは上のまとめの〈主な生活習慣に関する状況〉で60歳以上が良好なのに対し、20歳代および30歳代で課題が見られた事で、具体的には、以下のような結果が出ている事です。

次の表は年代別に「穀類と魚介類・肉類・卵・大豆(大豆製品)と野菜を組み合わせて食べる者の割合」をまとめたものです。3食ともに、穀類、魚介類・肉類・卵・大豆(大豆製品)、野菜を組み合わせて食べている者は男性で38.4%、女性で36.5%となっており、年齢階級別にみると、その割合は男女ともに若いほど低い傾向にあります。

 平成25年国民健康調査1 3食の組み合わせ

40歳代、50歳代、60歳代、70歳代と年齢が上がるごとに3食組み合わせ率が上がっており、食事に関する意識、あるいは昔ながらの和食の組み合わせで健康的な食事を摂っていることが分かります。

次の表は年齢別、性別の「運動習慣のある者の割合」です。

男女とも30歳代で運動習慣のある人の割合が低い事が分かります。一方で70歳代の男性で50%に迫る数字で運動習慣が有る事には少し驚きです。

平成25年国民健康調査2 運動習慣

さらに、年代別、性別の「朝食の欠食率」は以下の通りです。70歳代で朝食を抜く人は3%から4%程度しかいないのに対して20歳代の男性では20%以上の人が朝食を抜いている事は心配になります。

平成25年国民健康調査3 朝食の欠食率

 昨日(平成26年12月14日)の衆議院総選挙の投票率が過去最低の52%程度と言う報道がされていますが、若い世代での政治に関する参加意識の弱さを感じますが、自分自身の健康についての意識も弱いのではないかと非常に心配です。

 

 なお、ここに取り上げましたことは私が今回の発表を見て、意外だったことの記載ですので、それ以外の項目例えば、世代別の一日の歩数、肥満者の割合、糖尿病の可能性、咀嚼力の問題、飲酒禁煙等の項目については、年代別にそれなりの数字が表れており、高齢者には年齢なりの健康課題がある事は付け加えておきます。

 

詳細は、厚生労働省のホームページをご参照願います。

 

2014年12月15日 | カテゴリー : 社会保障 | 投稿者 : naruse163

平成24年度 国民医療費の現状

 10月8日に平成24年度国民医療費の現状についての発表が有りました。

 平成24年度の国民医療費は39兆2,117億円、前年度の38兆5,850億円に比べ6,267億円、1.6%の増加。人口一人当たりの国民医療費は30万7,500円、前年度の30万1,900円に比べ1.9%、額にして一人当たり5600円増加しています。

国民医療費の国内総生産(GDP)に対する比率は8.30%(前年度8.15%)、国民所得(NI)に対する比率は11.17%(同11.05%)となっています。

 

国民医療費

 

 上の図を見てもお分かりの通り、非常な勢いで伸びています。その中でも、一番の注目点は年齢別の医療費だと思います。

 年齢階級別国民医療費を性別にみると、0~14歳の男は1兆3,657億円(構成割合7.2%)、女は1兆1,148億円(同5.5%)、15~44歳の男は2兆3,458億円(同12.4%)、女は2兆8,609億円(同14.0%)、45~64歳の男は5兆422億円(同26.8%)、女は4兆3,962億円(同21.6%)、65歳以上の男は10兆930億円(同53.6%)、女は11兆9,930億円(同58.9%)となっています。

 国民全員の医療費を合計しても金額が多すぎて感覚が掴みにくいと思いますが、人口一人当たり国民医療費をみると、65歳未満の男は17万9,200円、女は17万4,900円、65歳以上の男は76万6,000円、女は68万800円となっています。

  9月29日のブログにも書きましたが、「健康寿命」と「平均寿命」の差が大きな社会問題であり、如何に寿命をまっとうするまで健康でいることが重要かと言うことを改めて感じます。65歳未満の男性は年間平均18万円弱の医療費で済んでいるのに対して、65歳以上の男性は77万円近い費用を毎年平均してかけていると言う事で、これが個人の心配でもあり、国の社会保障財政としても大きな心配でもあります。

 私たち一人ひとりが自覚を持ち、生活習慣を見直し、健康で医者や薬のお世話にならないで済む楽しい元気な生活を送りたいものです。

 

 社会保険労務士事務所 プラムアンドアップルでは、海外赴任経験者に対して海外年金に関する情報提供と申請代行サービスを行っております。これまでに海外赴任された方には海外年金受給資格の可能性があります。是非、赴任国、赴任時期によりご自身の受給資格についてご確認されますことをお勧めします。受給資格がありそう、ただ手続きが難しそうと思われる方には私共がお手伝いいたします。

就業率の国際比較

お厚生労働省の社会保障審議会で高齢期の就労と年金受給の在り方についての審議が行われていますが、その中で興味深い表が有りましたので、ここに示したいと思います。この表は就業率の国際比較(2012年)となります。 就業率の国際比較

  表の中の数字の単位は%です。日本の列の一番上、75.4とは日本の男女合計で55歳~59歳の人は75.4%の人が就労していると言う意味になります。

 この表を見ると、日本は働き者の国と言う事が分かります。特に60歳~64歳の比較、さらに65歳から69歳の比較で欧米に比べて就労の比率が高くなっています。65歳から69歳の男性で日本は46.9%と半分弱の人が働き続けているのに対して、フランスでは7.1%の人しか働いていない事が分かります。

この事は、定年の年齢および年金受給開始年齢に関係してきます。日本は65歳までの雇用義務化が進んでおり就労率が上がってきています。一方で、フランスでは、仕事を早めに引退し定年後を楽しむ傾向が有るのだと思います。

また、就業規則に年齢の要素を入れてはいけない法律が有るアメリカでは、年齢と退職の関連性は直接的には関係してきません。意外なのはドイツです。フランス程では有りませんがフランス、イタリアに続いて就労年齢が低い傾向がみられます。

一方、韓国の場合は日本よりも就労年齢が高くなっています。特に65歳~69歳では日本より高くなっています。 各国での働くことに対する意識が表れている興味深い数字だと思います。

国際シンポジウム「2020年へ、日本は世界に何を発信できるか」に参加して

 昨日、東芝国際交流財団、日経新聞社、日本経済センター主催の国際シンポジウムが有り参加しました。

 2019年にはラグビーのワールドカップ、2020年には東京オリンピック、パラリンピックが開催されますが、その時点までに日本力を世界にどのように発信、提案してゆくか?について考える催しで、600名の定員が一杯になるほどの盛況でした。

 バブルがはじけて二十数年経過しますが、閉塞感で抜け出せないと感じている日本はどうするべきかと言うテーマに対して、パネラーの討議が行われました。 何といっても大きなテーマは「少子高齢化をどのように克服するか?」です。

 第二次世界大戦の混乱期から奇跡の成長を遂げ、50年前の1964年東京オリンピックを契機に日本全体が成長していった時代はまさに人口ピラミッドが形成されて成長エンジンが出来ていました。しかし、それから50年が経過した2014年今年は65歳以上の人口が全人口の25.9%となっており、2020年には29.1%さらに2040年には40%になると予測されている世界のどの国も経験した事の無い超高齢化社会になってゆきます。その社会をどのように成立させるのか日本人の知恵が問われています。

 パネラーからは、日本はまだ製造業で世界No.1になった成功体験から抜け出せていないのが大きな課題であり、既に日本のGDPに占める製造業の割合は25%しか無く、サービス産業の割合が75%となっているにも関わらず、日本におけるサービス産業の生産性はアメリカの60%と大幅に劣っていることを十分認識できていないとの発言が有りました。 この認識を変え、かつ規制改革を大胆に実施する事によりサービス産業の生産性を上げる抜本改革が必要との発言でしたが、確かにその通りで日経ホールを埋めていた参加者を見渡しても主催者の東芝を含めたメーカー人間で今は定年を迎えたような60歳、70歳代の参加者の数が目立ち、我々自身の問題だと感じる場面でした。

 今の日本はこれまで企業が海外進出していた部分をインフラ関係の公共団体と企業(鉄道、水道、ごみ処理、環境保全)が日本の技術の海外進出に置き換えようとしている感覚が有りますが、それらだけでは無く不十分です。日本の製造技術の輸出では円安でもそのメリットが全く発揮されません。日本の高齢化社会克服のノウハウを、輸出し今後世界各国が迎える高齢化社会にそのまま活用できるようなサービス産業としてのビジネスにしてゆく、年金、介護、健康管理の取り扱うノウハウが他国で活用でき、付加価値の高いビジネスモデルとして構築できて行けば日本人のきめ細かく工夫してゆく日本人力が活用できるのではとの感想を持ったシンポジウムとなりました。

 

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2014年10月4日 | カテゴリー : 社会保障 | 投稿者 : naruse163

国民生活に関する世論調査(平成26年6月調査分)が発表されました。

平成26年6月に実施した「国民生活に関する世論調査」が内閣府から本日(8月25日)発表されました。 調査の項目は以下の内容です。
  1. 現在の生活について
  2. 今後の生活について
  3. 生き方、考え方について
  4. 政府に対する要望
去年と比べたときの生活の向上感について、男性の20歳代から40歳代は「同じようなもの」と答えた一方で男性女性ともの60歳代、70歳代以上では「低下している」と答えています。 「満足している」または「まあ満足している」と答えた人を「満足」、「やや不満だ」または「不満だ」と答えた人を「不満」とすると 現在の生活の各面での満足度で「満足」と答えたのは
  • 所得・収入の面で 44.7%
  • 資産・貯蓄の面で 37.3%
  • 耐久消費財の面で 70.9%
  • 食生活の面で   86.4%
  • 住生活の面で   78.6%
に対して、「不満」とする者の割合は
  • 所得・収入の面で 54.1%
  • 資産・貯蓄の面で 60.2%
  • 耐久消費財の面で 27.4%
  • 食生活の面で   13.1%
  • 住生活の面で   20.9%
となっています。 特に資産・貯蓄の面で 37.3%の「満足」に対して60.2%の「不満」の答が多いのが印象的です。前回の調査結果との比較でも資産・貯蓄の面で「満足」が(42.7%→37.3%)と低下し、「不満」が(53.7%→60.2%)と大幅に増えているのも特徴的です。 日頃の生活の中で。『悩みや不安を感じている」と答えた者(4172人)に、悩みや不安を感じているのはどの様な事か聞いたところ、「老後の生活設計について」を挙げた者の割合が57.9%と最も高く、以下「自分の健康について」(49.7%)、「家族の健康について」(41.9%)、「今後の収入や資産の見通しについて」(41.0%)などの順になっています。前回の調査結果との比較では「老後の生活設計について」(55.3%→57.9%)を挙げた者の割合が上昇しています。 性別、年齢別で意見が異なり、一様では有りませんが、やはり将来に向けての不安が大きいのが影響しているのではと推測出来そうであり、社会保障問題が非常に重要な事が良く認識できます。海外年金を切り口として社会保障問題に取り組んでいる私たちとしても、このような世論の意識を強く認識する機会にしたいと考えます。  
2014年8月25日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : naruse163