インドのモディ首相来日に関連して

インドのモディ新首相が海外で最初に訪問先に選んだ国が日本になった事で話題になっており天皇陛下もお会いになった事がニュースにも取り上げられております。安倍首相と交わした共同宣言でも、日本は3兆円規模の投資を行い拠点数を2倍に増やすとなっておりますが、実はインドは日本企業の拠点数のランクでは昨年実績で中国、アメリカについで第3位になっております。

  1. 中国    拠点数 31661拠点
  2. アメリカ  拠点数  7193拠点
  3. インド   拠点数  2510拠点

ちなみに 第4位はアジアのデトロイトと言われているタイで1580拠点となっております。 それだけ拠点数の多いインドですので、さぞかし多くの日本人赴任者がすでに赴任していると想像できますが、赴任者数の統計では驚くほど少なくなっています。 民間企業からの海外赴任者ランキングは以下の通りで

  1. 中国     赴任者本人  75246名  赴任者家族 32268名  帯同人数比率 43%
  2. アメリカ   赴任者本人  54742名  赴任者家族 10209名  帯同人数比率 109%
  3. タイ     赴任者本人  27341名  赴任者家族 16703名  帯同人数比率 61%
  4. シンガポール 赴任者本人  11912名  赴任者家族 11772名  帯同人数比率 98%
  5. イギリス   赴任者本人  9343名  赴任者家族  10209名  帯同人数比率 109%
  6. ドイツ    赴任者本人  7149名  赴任者家族  7199名  帯同人数比率 101%

  かなり順位を下げて インド   赴任者本人  4102名  赴任者家族 1833名  帯同人数比率 45%  となっております。

 人口12億人の巨大な市場でその国土も広く、かつ地域地域での独特な合弁相手先と州ごとに異なる税金制度があるインドでは、現地でのビジネスをするためには拠点数は必要だがまだまだ日本あるいは日本人にとっては遠い存在の国がインドと言った感じがします。 私自身、前職で海外赴任者に関係する仕事をしておりましたが、その際に気にしていたのが帯同率で赴任者本人にご家族が一緒に赴任しているか(帯同しているか)の割合です。

 外務省の統計では家族数としては統計が取られていませんが、家族一人ひとりを人数に数えた帯同人数の統計はあり、それで比較すると上のリストの通りインドは45%と非常に低くなっております。欧米では、1人の赴任者に奥様(配偶者)とお子様が何人か帯同され帯同人数比率が100%を超えることが多くなっておりますが、インドの場合はかなり低いのが現状で、単身赴任が多くなっているあるいはご結婚されていない独身赴任者が多くなっていることが推測できます。

 今回のモディ首相の訪日を機に、インド側での税制面その他での改善がなされ、日本企業が進出しやすい環境が整い、インドへのご家族を含めた赴任者が増え、相互の交流が深まる事を願いたいと思います。具体的には、日本と世界各国(現在15か国)との間で発効しております社会保障協定があります。インドとの間でもすでに社会保障協定は締結しておりますが、まだ発効はされておりません。これを機に早期に発効され相互の人材の移動についての制約が削減されてゆくことも期待したいと思います。

 

 社会保険労務士事務所プラムアンドアップルでは、海外年金に関する情報提供と申請代行サービスを行っております。これまでに海外赴任された方には海外年金受給資格の可能性があります。是非、赴任国、赴任時期によりご自身の受給資格についてご確認されますことをお勧めします。受給資格がありそう、ただ手続きが難しそうと思われる方には私共がお手伝いいたします。

イギリス New State Pensionの任意加入条件

2016年より導入されているイギリス New State Pension制度では、受給資格を得るには10年間の英国社会保険加入期間が必要となっており、英国でのご勤務が10年に満たない場合には、今から任意加入(Voluntary Contribution)を行う事により、不足分を補う事が可能となっております。ただし、その任意加入を行うには、英国での社会保険加入認定期間(クレジット)が3年間以上の有る方に限られますとの記載が、英国歳入庁発行の英国外居住者向けガイドブックに記載されています。 しかしながら、最近(2018年11月)の英国歳入庁からの連絡では英国社会保険加入期間が2年の方に対しても、あと8年間の任意加入により受給資格を作る事ができますとの案内がされております。イギリスご勤務が3年に満たない場合でも、ご自身の年金記録確認を行い、任意加入により受給資格を構築できる可能性がございます。是非、調査されます事をお勧めいたします。

アメリカ最大の年金基金カルバースの動きに変化

 米最大の年金基金であるカリフォルニア州公務員の退職年金基金 カルバースの運用方針が変わったとの報道が有りました。日本最大の年金基金GPIFが日本の株式相場に大きな影響を与え、アメリカ最大のカルバースの運用方針が不動産投資に動き、運用益を改善しようとすることがその他の一般投資家心理をどのように揺さぶるのか、少し心配のネタが大きくなりそうです。

アメリカ年金のベンドポイントの仕組み

 アメリカ年金においては、日本の基礎年金(国民年金)に相当する定額給付が存在せず、厚生年金に相当する年金となっています。その再分配効果を高めるため、年金額の算定基礎となる平均賃金が高い場合に、給付率を減少させる仕組みが設けられており、この仕組みはベントポイントと呼ばれています。

US bent point

 図面の中に小さな注釈で書かれていますが、アメリカ年金の場合、給付算定式の屈折点(ベントポイント、816ドルおよび4917ドル)は、年金の所得代替率が平均賃金の者につき約41%、低賃金(平均所得の45%)の者につき約55%、社会保障税課税上限の高賃金の者につき約27%になる様に設定されています。

対象者 被用者および月所得400ドル以上の自営業者
保険料率

被用者:被用者本人6.2%、雇用者6.2% 合計12.4%

自営業者:12.4%
最低加入期間 40四半期(10年間に相当)
満額加入期間 35年間
支給開始年齢 66歳(2027年までに67歳に引き上げ)
国庫負担 通常国庫負担は行われない

 

年金額算定式は以下の通りとなります。

基本年金(月額)=0.9A +0.32B +0.15C

Aとはスライド済平均賃金月額である815ドルまでの分

Bとはスライド済平均賃金月額816ドルを超えて4917ドルまでの部分

Cとはスライド済平均賃金の4917ドルを超えた部分

 

出典:厚生労働省 社会保障審議会 年金部会

アフリカには8236名の在留邦人(外務省まとめ)

 外務省領事局政策課が毎年10月に前々年の海外在留邦人数を発表しています。

 それによると、アフリカに在留している日本人数は合計8236名となっており、それぞれの国での在留人数は以下の通りです。 エチオピア 240名、エリトニア国 1名、ガーナ共和国 344名、カーボヴェルデ共和国 2名、カボン共和国 81名、カメルーン共和国 79名、ガンビア共和国 13名、ギニア共和国 30名、ギニアビサウ共和国 6名、コートジボワール共和国 55名、コモロ共和国 5名、コンゴ共和国 8名、コンゴ民主共和国 76名、サントメ・プリンシペ民主共和国 0名、ザンビア共和国 272名、シェラレオネ共和国 29名、ジンバブエ共和国 78名、スーダン共和国 108名、スワジランド王国 15名、セーシェル共和国 11名、赤道ギニア共和国 3名、セネガル共和国 244名、ソマリア 1名、タンザニア連合共和国 392名、チャド共和国 9名、中央アフリカ共和国 6名、チュニジア共和国 171名、トーゴ共和国 1名、ナイジェリア連邦共和国 153名、ナミビア共和国 109名、ニジュール共和国 16名、西サハラ 1名、ブルキナファソ 117名、ブルンジ共和国 13名、ペナン共和国 74名、ボツワナ共和国 78名、マダガスカル共和国 105名、マラウイ共和国 183名、マリ共和国 23名、南アフリカ共和国 1514名、南スーダン共和国 47名、モーリシャス共和国 36名、モーリタニア・イスラム共和国 20名、モザンビーク共和国 119名、モロッコ王国 383名、リビア 36名 リベリア共和国 9名、ルワンダ共和国 83名、レ・ユニオン 18名、レソト王国 8名

 今回エボラ出血熱が猛威を振るっているギニア、シエラレオネ、リベリア、ナイジェリアにも多くの日本人が在留しております。WHOは先週開催した緊急委員会で非常事態宣言を発表しています。皆様、どうかくれぐれもご留意ください。

 私たちの家族の海外赴任は1980年代から2000年代で海外赴任の主流は欧米でしたが、今は赴任先が世界中となっており私の家族の一人も今年6月にインド ニューデリーに赴任となりました。 外務省の海外在留邦人調査統計での平成24年度(現時点でこれが最新データです)では125万人の人が海外で長期生活しており(海外出張者は含まれていません)日本の全人口の1%の人が海外にいる計算になります。

 昔は欧米、今は開発途上国への赴任の傾向と感じますが、欧米も決して人数が減っている訳では無く、着実に人数は増えていることがこの統計を見るとわかります。まさにグローバル化は留まるところが無い事を感じます。 我々社会保険労務士事務所プラムアンドアップルは、その中で社会保障・海外年金を専門に担当する社会保険労務士事務所としてその時代変化をきちんと把握し仕事をしてゆきたいと考えております。

2014年8月11日 | カテゴリー : 海外事業 | 投稿者 : naruse163

アセアン RCEP(東アジア包括的経済連携)の閣僚会議について

 1967年に東アジア諸国連合としてスタートしたASEANが、確実に世界の中でのポジションを獲得してきており、今後はその周辺国6か国(日中韓印豪NZ)との連携の形が出来るRCEPは非常に重要な経済連携だと注目しておりました。

 RCEPについては2011年にASEANが提唱し、2012年に首脳外交により正式に交渉が開始され、来年2015年からのスタートを目指しています。 RCEPが実現すれば、人口約34億人(世界の約半分)、GDP約20兆ドル(世界全体の約3割)、貿易総額10兆ドル(世界全体の約3割)を占める広域経済圏が出現します。日本全体とASEANの関係がますます強化され、交流も増えてゆくことになります。

 1980年代から1990年代にかけて、欧米への海外赴任者が増え、アメリカNJ/NY地区では日本人学校が次々と開校して行ったのと同じ様な海外赴任者の増加が今後ASEAN各国で見られることになるでしょう。もちろん、生活環境、教育環境、医療環境が国により異なりすべて一様にはなりませんが、中国は上海、北京等を筆頭に物価レベルが高くなりすぎ、人件費も高騰し、次の生産市場と消費市場を目指して多くの企業がASEANに出てゆくことになることは間違いありません。

 1980年代、1990年代は大企業が新規市場開拓の目的で欧米市場に進出してゆきましたが、今は街のパン屋さんと言った個人経営のお店、ラーメンのチェーン店、中小企業等を含めて全企業が海外進出を検討する時代になってきており、そこに働く社員の全てに海外勤務の可能性が出て来たと言える時代です。

 ただし、海外市場は甘くは無く、そこに新規市場が有ると思っても、実は多くの競合企業がすでに存在しており、現地の複雑でわかりにくい規制もあり、パートナーとの合資しか許されず、そのパートナーとの関係構築がうまく進まず結局断念し、大きな負担が発生する場合も少なくありません。その様な事が起こると資本の小さな企業にとっては、存続の危機でもあり得ます。 RCEPが日本の産業、日本人に与える影響について、複雑さを増す時代の変化点である事を考えさせられます。

2014年8月26日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : naruse163

NHKスペシャル 「老後危機」

先週土曜日(2015年7月11日)にNHKスペシャル 「老後危機」が放映されました。

ご覧になった方も多いと思いますが、日本の大きな課題である老齢社会の課題について1時間でまとめ整理の出来る放送内容だったと思います。

 

今年度、年金が実質減額に。

医療や介護の費用も増えるばかり。

“悠悠自適”とはいかなくなった日本の老後。

あなたはどう感じていますか。

 

と言うキャッチフレーズで始まる放送内容で、種々のデータが示されていました。

 

必要な老後資金は?

年金の実質減額

難しくなる老後の蓄え

世代間格差

老後危機はさらに深刻に

懸念される女性の貧困

社会保障の現状

 

また番組のホームページでは放送終了後にも色々な情報提供を行っており、一度見る価値は有るのではと思います。ご自身がどんな老後の準備をしているのか?自分自身でタイプ診断をする事も出来ます。URLは以下の通りです。

 

http://www.nhk.or.jp/ourfuture/

 

NHKの宣伝をするつもりは有りませんが、番組の中でも、広い年代の視聴者が参加しての討議が行われている内容にもなっており、ご家族あるいはお友達と社会保障について話し合いを持つ機会にもなるのではと思います。

私共、社会保険労務士事務所プラムアンドアップルでは海外年金の情報提供を行っておりますが、この番組が目的とするところの多くの方に現在我々すべてが抱えている問題を的確に理解し、対策について考えて行く機会を広げたいと言う考え方では同じものが有ります。

私自身も、番組は見逃してしまいましたが、NHKオンディマンドで単独には216円で視聴する事が出来ました。その価値は有るのではと考えます。

どうぞご参考にしていただきたく。

GPIFポートフォリオ見直しについて

 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が基本ポートフォリオの見直しなどで運用委員会の事前承認制を導入する事が決まったとの報道。世界最大の運用資金130兆円をどのように安定的に管理運用してゆくかは非常に大きな課題。最近の為替相場や株価、債券相場の動きにも大きく影響してきている様で注目してゆきたいものです。

2014年8月9日 | カテゴリー : 年金 | 投稿者 : naruse163

GPIFの株投資上限撤廃

 GPIFで扱う公的年金(総資産130兆円)の運用先としての株投資上限が無くなるとの報道がありました。これにより今年3月現在株式へ投資されている比率16%が20%になるだけで5兆円が株式購入として増額になります。現在の東証株価総額が459兆円ですから1%以上の資金が流れ込むことになります。これが株価にどう影響するのか? 一方で売りに回る国債がどのようなるのか?注目です。

2014年8月10日 | カテゴリー : 年金 | 投稿者 : naruse163

GPIF 運用ポートフォリオの変更とそのリスク

事実上選挙は始まっていますが、社会保障は大きな争点となります。

そんな中で社会保障審議会の年金部会を傍聴しましたので、その内容を共有したいと思います。

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第29回社会保障審議会 年金部会が開催されたのは11月19日、丁度イチョウ並木がきれいになっていた晴天の日でした。

 

第29回では大きな二つのテーマが討議されましたが、ここではGPIFのポートフォリオ変更について取り上げます。

新聞等で報道されていますが、GPIFでは運用している年金資金の運用ポートフォリオつまり、どこにどれだけの比率で分散投資するかと言う投資の方針を変更しました。

具体的には、以下の通りとなります。

GPIFポートフォリオの変更

この変更は、今後年金財政を考えたときに現在の国債に高い比重を置いた運用方針では年金支給財源が不足してゆくとの危惧から来ており、変更後のポートフォリオにより年1.7%の運用を目指すと設定した上での変更となります。

 

ただし、ここで問題になるのはリスクです。出席されていた有識者の委員の方からもその点に多くの質問が出ていました。国債についてはローリターンでは有りますが、ローリスクであり元本が減額になることはよほどのことが無い、ある意味では保証されていると言った投資先で有ります。一方で、ハイリターンを目指す株式投資ではリスクは高くなります。

GPIFでは専門家にその運用について委託をしており、その専門家からはリスクについて次の様な表が示されておりました。

GPIF運用の確率

運用予測については正規分布で示すことが出来、左側の斜線が入った部分が、名目賃金上昇率を下回るリスクとなります。ある程度リスクを冒さないと高い運用は目指すことが出来ない事は事実であります。

新聞やTVの報道でも、大衆の関心を煽るような見出しでの報道は有りますが、もう一歩あるいは二歩踏み込んで、リターンとリスクの関係をわかりやすく国民に伝えることをしないと、国民をミスリードするような気がします。国民もそのような報道を求める姿勢が重要だと考えます。

 少子高齢化で財政的に難しくなる年金資金、この運用の具体的アクションはアベノミクスにも大きく関係してきます。どれだけの金額を具体的にどの株に投資するかは株価に直接的に影響するため、公開されておりませんが既にポートフォリオの変更は開始されており、それが今の株価上昇の一つの原因になっているのではと推測します。(この部分は社会保障審議会の中の話では有りませんが)

 

どうお考えになりますか?

詳細は、厚生労働省のホームページで、社会保障審議会、年金部会をたどり平成26年11月19日実施の社会保障審議会、年金部会の資料で読むことが出来ます。興味のある方は是非ご覧ください。

 

2014年11月29日 | カテゴリー : 社会保障 | 投稿者 : naruse163